北の小さな町の漁師・善次は、喧嘩別れをして一度も会っていない息子の光雄をがんで亡くす。葬儀にも出席せず四十九日を迎えるところに、光雄の妻・透子が娘の美晴と凛を連れて、善次の元を訪ねてくる。善次は、彼女たちを通して亡き息子に想いを馳せる。透子は、聴覚過敏を持つ自閉症の美晴を守るのに必死だ。美晴は、守られてきた世界から一歩でも外に踏み出したいと願うものの、失敗や不安を感じると布団を被り夢の中に逃げ込む。そこは、父の光雄が生前病床で書いた「美晴に傘を」という絵本の世界であった…。喪失を乗り越えた先に光る、絆と癒しの涙。言葉が心を紡ぐ、家族再生の物語。