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2019.10.24
『ひとよ』白石和彌監督の最新作にして最高傑作
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舞台はとある地方都市の小さなタクシー会社。15年前、家族に暴力をふるう猛獣のような夫をタクシーでひき殺した母親は、服役して世間のほとぼりが冷める頃に帰ると言い残し、出頭します。子供たちを守るためには「もう殺すしかない」と思い、実際に行動に移すまでに追い詰められた母の決意と不器用さが痛いほど伝わってきて、冒頭シーンからクライマックスさながらの緊迫感です。
そして時が流れ、すでに大人になりそれぞれの生活を送っている3兄妹が、約束通りに帰ってきた母と再会し、空白を埋めていく過程が丁寧に描かれていきます。15年という期間は長いようで短く、見る側にとっても体感として想像できる年月ではないでしょうか?15年前と現在までの期間は本編中ではほとんど描かれていませんが、3兄妹が身を寄せ合いながら、どん詰まりの思春期を生き抜いたであろう痕跡が、画面にはしっかりと刻まれています。子供を守るために身を挺した母と、それによってバッシングにさらされた3兄妹。母への感謝と恨みが混ざり合う複雑な心境には説得力があり、ひたすら目が離せません。
母を演じる田中裕子はじめキャストの渾身の演技もさることながら、脚本や美術など総合的にチームを率いる白石和彌監督の手腕は、作品を重ねるごとに熟練していくようです。ストーリー自体は過酷な設定ながらも、事件前から母子を見守ってきた叔父やタクシー会社の従業員が家族のような存在として登場し、作品全体に温かな空気を満たしています。重くなり過ぎず、時にクスッとした笑いも誘う絶妙なさじ加減が、白石監督のトレードマークなのかもしれません。原作は劇団KAKUTAを主宰する桑原裕子さんの同名舞台で、同世代のプロデューサーが惚れこんで映画化が実現しました。40代の中堅が組みたい人と組み、作りたい作品を作ったと思わせるような、純粋なエネルギーに満ちている傑作です。今年度もまた『ひとよ』で白石組が国内賞レースを席巻することは間違いありません。どうかお見逃しなく!
(フォーラムシネマネットワーク番組編成 長澤 綾)
(C)2019「ひとよ」製作委員会
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