メッセージ from フォーラム
『ソロモンの偽証』の完成度に括目せよ。
2015.2.1
ちょっと時間があくと書店に立ち寄るのを習慣にしているので、去年の秋に「ソロモンの偽証」が文庫化され、毎月2冊ずつ刊行されているのは知っていました。宮部みゆきは大好きで、初期作品はほとんど読んでいますが、「ソロモンの偽証」は500ページの文庫本で全6冊、合計3000ページ以上という分量に恐れをなして、手出ししないでいました。
一方、『八日目の蝉』の成島出監督が全国一万人の応募者の中から、オーディションで33人を選び、中学生役をすべて新人から起用するという映画を作っていて、その2部作の前篇が完成したという連絡があり、12月17日、イマジカで興行者向けの内覧試写会が開かれました。
クリスマスの朝、雪の校庭に転落死した男子生徒。警察は自殺と判断したが、殺人の目撃者を名乗る告発状が届く。隠された真実を暴くため、中学生が被告であり、検事も判事も弁護人もすべて中学生という、前代未聞の学校内裁判が開廷される――。
映画があまりに面白かったので、原作も読み始めました。映画の前篇で描かれているのは、原作4冊分。原作通りに描くと、どうしても10時間は超える分量です。それを2時間にまとめるとなると、どうしても取捨選択が多くなります。原作のエピソードの多さ、面白さに驚きました。半分読み終えたところで、もう一度映画を観ました。映画はとてもすっきり、わかりやすいのに面白い、ふしぎな完成度です。
製作は松竹。昨年あたりから独自企画のヒット作が増えてきましたが、今年は何か爆発しそうな勢いが感じられます。『ソロモンの偽証』は、おそらく前後篇で50億円ぐらいの大ヒットになるのではないかと期待しています。
映画業界、昨年は4年ぶりに年間2000億円を回復して、実にいい流れです。『マエストロ!』もほぼ、期待を裏切らないヒットになっています。
さだまさし原作・主題歌の『風に立つライオン』。まだ試写を観れてはいませんが、けっこう期待できる作品に仕上がっているようです。
『エイプリルフールズ』も大人の喜劇として楽しめました。東宝のラインナップは今年も盤石です。
さて、米アカデミー賞の発表が1週間後に迫ってきました。つまるところ、『アメリカン・スナイパー』と『6才のボクが大人になるまで』と『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』の争いになるとは思うけど、アカデミー賞はたとえノミネートだけに終わっても、この3作はやっぱりすごい映画ぞろいです。たとえ賞を外しても、ぜひご覧ください。作品の質は素晴らしいですから。
監督賞、主演男優賞など5部門にノミネートされている『フォックスキャッチャー』。アメリカのレスリング界をサポートしたデュポン財閥の御曹司の実話です。今回、映画を観るまで、こんなことが実際に起こっていたなんて全く知りませんでしたが、まさに「事実は小説より奇なり!」の映画でした。ファンの方にはお薦めします。
安藤サクラさんがフォーラム4地区縦断で舞台挨拶をして下さることになりました。『0.5ミリ』『百円の恋』の両方観ると、彼女のすごさがわかります。私もぜひ会いたいと思っていました。楽しみです。
2015年2月13日
(フォーラムネットワーク 代表 長澤裕二)
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