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2月のイチオシは『オデッセイ』 ―アカデミー賞の行方も気になりますが…―

2016.1.1

201601_odyssey© 2015 Twentieth Century Fox Film
『オデッセイ』公式サイトはこちら

 アカデミー賞のノミネートが発表され、それらの作品の試写も始まりました。今週ようやく観ることができた『ヘイトフル・エイト』の面白さに圧倒されました。残酷さが理由でR18+になってしまったのに、笑い声が絶えない映画になっています。クエンティン・タランティーノ監督の最高傑作が誕生しました。こういう映画こそフォーラムの最も得意とする世界なのですが、配給会社の意向で、東北地区の公開は仙台のみ2月27日(土)の同発スタートで、その他の地区は4月以降に延期されてしまいました。期待してお待ち下さい。

 リーマン・ショックの真実を描いた『マネー・ショート 華麗なる大逆転』は、1回観ただけでは理解できない所もあって、昨日2度目の試写を観ました。サブプライムローンという、高リスクな低所得者向けの住宅ローンを含む債権を、他の債権と混ぜ込んでリスクを低く見せかけた「債務担保証券(CDO)」として一般投資家に売り出し、年金基金等の機関投資家が大量に購入しました。しかし、住宅バブルが崩壊し、住宅ローン破産者が激増して、CDOを売り出した投資銀行が破綻。他にも多くの銀行が破綻して、アメリカ国民の年金が失われるというひどい事態になっていたのに、当の銀行たちは国に救済されるという構図でした。映画は、CDOの矛盾・ごまかしに気づいたウォール街のアウトローたちが、CDOが破綻した場合に高配当があるデリバティブ取引「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)」に賭けるという、経済戦争のお話になっています。新鮮な魚が手に入らないので古い魚でシチューを作り提供する等のたとえ話を使い、難しい話をわかりやすく説明しています。

 映画の中に債権をAAAとかBBBというふうに格付けする会社が登場しますが、15年前まで、社債を売って調達した資金で、地方都市にショッピング・センターとシネコンを大量に作り続けたマイカルが、2001年9月に破綻した歴史を思い出しました。素人目からみてもあれだけ多くのシネコンを作り続けるマイカルの経営はおかしいと映ったのに、破綻前年の社債の評価は投資適格なBBBで、銀行までが購入していましたが、マイカルの破綻で7~9割もの損失を被ったのです。映画でも格付会社のかなりいい加減な実態が描かれますが、結局、格付会社が裁かれることはありませんでした。何となく、安全神話を振りまき、津波で大事故を起こしながら、今また再稼働させようとしている原子力発電と同じ構造のように見えて仕方がありませんでした。

 この映画、試写を2回観ても細部まで理解できたわけではありません。これから文庫本で500ページある原作を呼んで理解を深めたいと思います。

 こちらもフォーラム全地区で上映しますが、3月4日(金)同発スタートは仙台と八戸。その他の地区は4月の上映になります。

 昨日試写を観た『スポットライト 世紀のスクープ』は数十人もの神父による児童への性的虐待を、教会が組織ぐるみで隠蔽してきた衝撃のスキャンダルを、新聞社の記者チームが、暗闇からスポットライトを当てるという感動の物語です。フォーラムでは4月中旬から5月に全地区上映します。

 アカデミー賞最多12部門ノミネートの『レヴェナント 蘇えりし者』は、今晩が完成試写ですが、今は帰りのつばさの中なので、来週火曜に試写室で観ます。フォーラムでは全地区同発スタートの4月22日(金)公開です。

 さて、2月の一番のおすすめは『オデッセイ』です。2月4日(木)の前夜祭から上映が始まります。 火星での有人探査中、事故で火星に取り残された宇宙飛行士が、あらゆる知識と手段を行使して生き残りを図るサバイバル・ストーリーです。こんなことも可能なのかと、驚きの連続です。娯楽性と感動にあふれた映画です。

 2月27日(土)公開の『ザ・ブリザード』も今日試写を観たばかりのホットな映画です。64年前のアメリカ沿岸警備隊の実話を映画化したもので、定員12人の木造の救助艇で、32人の遭難者の救助に向かうという、ほとんど不可能な救出ミッションを描いた映画です。巨大ブリザードの巨大さが、超娯楽映画として楽しめます。今日の試写は2D版だったので、3D版が完成したらもう一度観ようと思います。

2016年1月28日

 

《追記》
 アカデミー賞4部門ノミネートの『ルーム』観ました。生まれてからずっと部屋=「ルーム」で暮らしている5歳の息子と若い母親。閉じ込められた「ルーム」しか知らない少年が、初めて[世界]と出会う衝撃を、観客は一緒に"体験"することになります。そして、「ルーム」に閉じ込められた"理由"を知ることになります。

 観た人を幸せにするのがいい映画なら、『ルーム』はいい映画とは呼べないかもしれませんが、"凄い体験"の映画です。"衝撃"の大きさは、昨年の『6才のボクが大人になるまで』を超えるかもしれません。アカデミー受賞がなくても、ぜひ体験してください。上映素材が限られていますので、上映は5月以降になりますが、フォーラムは全地区で上映します。

 アカデミー賞最多12部門ノミネートの『レヴェナント 蘇えりし者』はゴールデン・グローブ賞の作品賞(ドラマ部門)、主演男優賞(レオナルド・ディカプリオ)、監督賞(アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ)の3部門を受賞していて、アカデミー賞に最も近いという下馬評のある作品です。

 時は1823年。アメリカ西部、ミズーリ川沿いに進んでいたハンターたち。ガイドを務める主人公のグラス(ディカプリオ)はじめ一団は、娘をさらった白人を探す先住民アリカラ族に襲われ、多くの仲間を殺されてしまう。逃げる途中、グラスはグリズリーに襲われ瀕死の重傷を負ってしまう。ハンターの一人、フィッツジェラルド(トム・ハーディー)は足手まといのグラスを殺そうとし、それを見つけたグラスの息子を殺し、瀕死のグラスを置き去りにする。怒りと憎しみを原動力に、死の淵から蘇ったグラスは、燃えたぎるような復讐心を胸に、フィッツジェラルドを追跡する…。

 自分自身が生き残ることすら困難な中での追跡。見たこともない壮大なサバイバル・ドラマが展開されます。歴史ドラマとしての力強さと、ディカプリオの熱演が光る、圧倒的な存在感のある映画です。4月22日(金)からフォーラム全地区で一斉公開されます。ようやくディカプリオにもオスカーがほほえみかけるかもしれません。

2016年2月2日
(フォーラムネットワーク 代表 長澤裕二)

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