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2019.11.8
『人間失格 太宰治と3人の女たち』
人はそんなに綺麗には生きられない。
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太宰治の『人間失格』は日本でもっとも読まれている小説の一つで、夏目漱石の『こころ』と何十年にもわたり累計部数を争っています。また、一回のみならず、何十回、何百回と読んだ方が多いのも特徴です。時代を超え、なぜこれほどまでに人の心をつかんで離さないのでしょうか。この小説を読んだときに感じる安心、安堵、受容などの感情は、すべてを綺麗に生きなければならない息苦しい現代の人々を救っているのかもしれません。
愛する妻と子供がいたにもかかわらず、太宰治は愛人と子供を作り、さらに『人間失格』という最高傑作を生んだキャリア絶頂期に別の愛人と心中するという、常人には理解しがたい最期を迎えました。2010年の映画『人間失格』は、小説そのものを映画化しましたが、今作は『ヴィヨンの妻』『斜陽』『人間失格』など後期の傑作を書いている頃の太宰治が描かれています。監督は、極彩色の鬼才・蜷川実花で、『人間失格』の主人公・葉蔵よりも太宰自身の人生の方がはるかに興味深い、と語っています。
映画では、ただのスキャンダルや狂乱という視点にとどまらず、太宰の人間性や心理まで巧みに描かれており、太宰の小説を知る人にも満足感の高い仕上がりとなっています。主演の小栗旬は、太宰の捉えどころのなさ、底知れなさ、なぜか惹き込まれてしまう不思議な魅力を醸し出すカリスマそのものです。『斜陽』のモデルとなった愛人を沢尻エリカ、太宰と一緒に心中する〝最後の女〞を二階堂ふみが演じ、火花を散らしています。正妻の人物像を消化するのには蜷川監督も時間を要したそうですが、正妻役の宮沢りえの演技は圧巻で、一見淡々とした態度に見え隠れする深い愛が観る者の心を締め付けます。三人の中で誰がもっとも太宰を愛し愛されたのか。その結末はどういう意味を持つのか。興味がつきません。
今年の邦画の中でもトップクラスの面白さ。蜷川実花の真骨頂であり、太宰ワールドを描いた最高傑作をぜひお見逃しなく!
(フォーラムシネマネットワーク番組編成 長澤 純)
(C)2019「人間失格」製作委員会
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