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2020.4.10

ひたすら美しい農場ドキュメンタリー『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』

FORUM SELECTION

　今月は、新型コロナウイルス禍で疲れた心を癒し、未来を明るく照らすような美しい農場についてのドキュメンタリーをご紹介します。

　カメラマンのジョンと料理家のモリーは、大都会ロサンゼルスで保護犬のトッドを飼い始めるも、留守番中の鳴き声が原因で二度もアパートを追い出されてしまいます。そこで愛犬のために一念発起して、自然農園を作るというかねてからの夢を実行に移すことにしました。スポンサーとなる投資家を見つけて購入した土地は、東京ドーム17個分の荒れ果てた農地。ここへジョン達は豚、牛、鶏などの家畜を迎え入れ、約200種類の果樹と作物を植え、農薬を使わない循環型農業の実践を目指して奮闘します。自然を相手に数々のトラブルに見舞われながらも、信念を持って問題と向き合ううちに、カチカチに固まっていた土がふわふわの豊かな土壌に再生し、野生動物や昆虫が住み始め、まるで絵にかいたような美しい楽園が出来上がります。この過程がとてもダイナミックで、一度は人間に破壊された自然が、自らの力で本来の免疫システムを取り戻し、たったの８年間で完璧なハーモニーを奏でるようになる様はひたすら感動的です。

　本作の舞台となるアプリコット・レーン・ファームの農場主であり、製作・監督・脚本・撮影監督も務めたジョン・チェスターは、野生生物番組の監督・カメラマンとして25年のキャリアを持つベテランです。スクリーンに映る自然の美しさと動物たちの愛らしさに何度も頬が緩み、そしてどんな過酷な状況でも愛情とユーモアを持って自然と対峙するジョン達の大らかさに、凝り固まった心がほぐされていくことでしょう。

　現実がフィクションを凌駕するような出来事を見聞きする今日この頃ですが、このドキュメンタリーには良い意味で私達の想像を上回る奇跡がたくさん詰まっています。人間も自然の一部で、心にも免疫システムがあるはず。そんなことを思わせてくれる本作を、ぜひ劇場でご鑑賞ください。

 （フォーラムシネマネットワーク番組編成　長澤綾）

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