37年の短い生涯で、強烈な個性に貫かれた40本以上もの作品を手がけ、ヴェンダース、ヘルツォークらと並んで〈ニュー・ジャーマン・シネマ〉の代表格と称されたライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督。生きるが故の矛盾や絶望、愛するが故の悲しみ、思わず目を背けたくなるほどの人々の剥き出しの姿をスキャンダラスに、時に露悪的なまでに描き切り、そこに宿る仄かな光まで捉えた彼の眼差しは、美しい劇薬となって画一的な “幸福” を求める我々の心に深い傷痕を刻むだろう。
ファスビンダー美学の極致とも言えるふたつの監督作、『不安は魂を食いつくす』『マリア・ブラウンの結婚』、そしてファスビンダーが原作・脚本・出演を務め、スイスの名匠ダニエル・シュミットが監督した『天使の影』の3作が劇場公開。

『不安は魂を食いつくす』
 Angst essen Seele auf
 (1974/ドイツ/1h33)
監督・脚本：ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー
撮影：ユルゲン・ユルゲス
出演：ブリギッテ・ミラ/エル・ヘディ・ベン・サレム/バーバラ・ヴァレンティン/イルム・ヘルマン
■第27回カンヌ国際映画祭 国際映画批評家連盟 (FIPRESCI) 賞

『マリア・ブラウンの結婚』
 Die Ehe der Maria Braun
 (1978/ドイツ/2h00)
監督・脚本：ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー
監督：ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー
脚本：ペーター・メアテスハイマー/ペーア・フレーリヒ
撮影：ミヒャエル・バウハウス
出演：ハンナ・シグラ/クラウス・レーヴィッチュ/ギゼラ・ウーレン/クラウス・ホルム
■第29回ベルリン国際映画祭 銀熊賞

『天使の影』
 Shadow of Angels
 (1976/スイス/1h41)
監督・脚本：ダニエル・シュミット
脚本・出演：ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー
撮影：レナート・ベルタ
出演：イングリット・カーフェン/クラウス・レーヴィッチュ/アードリアン・ホーヴェン