ゆみ子が12歳のとき、祖母が失踪した。ゆみ子は自分の祖母を引き止められなかったことを深く悔いている。25歳になって結婚、息子も生まれ幸せな暮らしを送っていたが、あるとき夫が自転車の鍵だけを残して自死する。５年後、奥能登の小さな村に住む民雄と再婚するが、祖母と夫の喪失の思いにゆみ子は囚われ続ける…。芥川賞作家・宮本輝の同名小説を原作とし、是枝裕和監督の長編映画デビュー作となった『幻の光』。石川県輪島市を舞台に、「生と死」「喪失と再生」というテーマを陰影深い映像に昇華させた。だが、公開から29年後の2024年元日。能登半島地震で輪島市は甚大な被害を受ける。「当時、新人たちの映画づくりは暗礁に乗り上げていた。輪島市の協力がなければ、映画は完成していなかった」と振り返るのは合津直枝プロデューサー。「今こそ映画を通して輪島市に恩返しを」とリバイバル上映を企画した。本プロジェクトは、デジタルリマスターで新たに再生した『幻の光』を全国で上映し、映画に残る＜輪島の風景、生活、美しさ＞を伝えようとするものである。また、収益から諸経費を除いた全額を輪島市に届け、１日も早い復旧復興を祈念する。